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憲法の想像力

憲法の想像力』(奥平康弘 日本評論社)を読みました。

表現の自由」を専門とする憲法学者のエッセイ集。(手短なところでは宮台真司との対話集が新書で出ています。)理性的な法解釈に、直観や想像力、特に物語作用を入れようという著者のスタンスは、今の思想状況では当たり前かもしれない。だが著者の隠れたメッセージは「法律っておもしろい、心動かされるものだ」ということだと思う。

靖国に関する訴訟に関する箇所がよくそれを表しています。

「1997年4月の最高裁大法廷・愛媛玉串料判決は、国家機関と靖国神社とのつながりに一定の歯止めを設定し、憲法上の政教分離原則をはじめて積極的に明らかにしたということで世間一般はもちろんのこと、憲法学会においてもきわめて評判が高い。しかし、(・・・)正直なところ、読んで感動がわかないのである。(・・・)たとえば、おなじ政教分離関係のアメリカ合衆国最高裁の、先にも言及したエヴァンソン判決を読んでみなさい。そこにはある種の品格があり格調の高さを感じるものがあるのだ。(・・・)いちいち例証しないが、多くの判決が、目線を高くとって歴史を背景に原理原則を語って雄弁である。何十年にもわたり何度も何度も引用され、その意味でいまなお生きている名判決のかずかずは、ほとんど『文学』的作品といえる域に達しているとさえいえる。」(pp.214−215)

司法が人を動かす物語を提供できれば、今のひどい報道状況にはならなかったかも。

でも自分たちの仕事(生活)が人の心を撃てるかどうか、感性的に響く何かを持っているかは、自省しないといけないところですが。。