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(月3回以上更新目標)

Give me a reason(宇多田ヒカル)

久しぶりの音楽カテゴリです。ずっと前からこれは書きたいと思っていた宇多田ヒカルの「Give me a reason」の歌詞の紹介です。

youtu.be

まずは、下を見てください。

Give me a reason to show you
訳もなく微笑むたびに
(won't you)Tell me why I should try to
明日を見つめようとしないで
Give me a reason to love you
すべての法則うらぎってみせる
たとえそれが運命でも

すごく多面的な詩だと思いませんか?まず、reasonは理由という意味ですが、根拠という意味もあります。この詩の中では、歌い手はなぜその人(you)を愛するのかがよくわからないのです。だから「あなたを愛する確固とした根拠を私にください」となるのです。しかし、これは判断を他人に委ねる他律的な態度です。それゆえ「すべての法則うらぎってみせる」という根拠付けをこえた決然とした主体的態度が出てきます。

しかしそれで終わりません。英語部分だけを訳してみると、

「なぜ、私は自分自身にあなたを愛する理由を与えようとすべきなのか、そのことを(よかったら)あなた、私に教えてくれない?」

というIとYouがせめぎあった文章となります。IとYouが決然と分かれている英語だから可能になる表現です。そもそも、reason to show youという「私があなたに見せるべき根拠」を「私にください」というのは矛盾した表現です。

このためらいをもった屈折した英語の文章とどちらかといえば決然とした日本語の詩が、重なりあいながら曲が流れていきます。

この詩が分かるのは、曲の頭にある「Only sixteen」だからかもしれません。成長しなきゃ。