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(月3回以上更新目標)

「図書館相談 まるでクイズ…「大阪府民やり過ぎ」知事苦言」記事について

このブログでは、自分の仕事(図書館)について書かない主義を取ってきましたが、橋下知事の下の発言を巡って、いろいろ考えたので、少し長めに書きます。

[ニュース報道]
■図書館が受ける「高度な」質問とは?
http://mytown.asahi.com/osaka/news.php?k_id=28000000909260002

■図書館相談 まるでクイズ…「大阪府民やり過ぎ」知事苦言
http://osaka.yomiuri.co.jp/tokusyu/h_osaka/20090925-OYO8T00407.htm

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http://b.hatena.ne.jp/entry/osaka.yomiuri.co.jp/tokusyu/h_osaka/20090925-OYO8T00407.htm


「犬小屋の作り方を知りたい」「本にかびが生えた時の対処法は」――。
大阪府民から大阪府立中央図書館(大阪府東大阪市)に寄せられる相談の一例だ。安易な質問も少なくなく、司書らはその対応に追われていることから、橋下知事は24日の定例記者会見で「大阪府民としてやりすぎでは」と苦言。「どれくらいの人件費がかかっているかをオープンにし、大阪府民に問わないといけない」と、図書館の業務について再検討を示唆した。

よくよくぐぐってみると、話は「大阪府市場化テスト監理委員会」から出たものみたいです。

■ともんけんウィークリー
http://tomonken-weekly.seesaa.net/article/128136087.html


・「南の島と島の間の距離を知りたい。」「電柱を利用したいが、どうすればよいか?」という質問に答えるのだが、半日や1日かけて調べて、さらに国レベルのデータ・ベースに載せるためにかかるコストを考えると、官のサービスとして質が高すぎるかとも思う。府職員の時間給は約4,000円、退職金も入れると4,700円から4,800円になる。一人の人に何万円もコストになる。それだけ行政コストがかかっているということになると、資源配分を図書館として考えるべきではないか。資源配分としてそのコストで子どもたちの本の蔵書を増やし、読み聞かせボランティアを活用することも考えられる。図書館として、より多くの人にベネフィット(利益)になることも考えてはどうか。委員会の結論を超える個人的な考えである。職員が高度なレファレンスをすることを悪いと言っているわけではない。行政サービスは維持することが大事だ。

[論点の提示]

おそらく論理を取るとこうなるのではないでしょうか?

委員の意見:
「『安易な質問』にこたえる業務にプライオリティはあるのか?
もっと別の業務に資源配分すべきでは。」
⇒橋本知事の意見:
「そもそも『安易な質問』そのものがばかばかしいのでは?
公共サービスとしてコストがかかるだけのもの。府民も自粛を。」

安易な質問とされた事例としては以下の通り。
・「犬小屋の作り方を知りたい」
・「本にかびが生えた時の対処法は」
・「南の島と島の間の距離を知りたい」
・「電柱を利用したいが、どうすればよいか?」

[私の意見]

委員によれば「子供用の本の蔵書構築」や「読み聞かせボランティアの養成」の方が、はるかに優先度が高いとされます。どの業務も大事だと思うので、客観的に優先度がどうとは言いづらいでしょう。ここは府立図書館さんの判断によると思います。この意見への判断は保留します。

問題だと思うのは、知事が(おそらく委員も含めて)、「『安易な質問』にこたえることがばからしい」と考えているかもしれない点です。

この考えに対する私の反論としては、まず

「あなたは、その質問をばからしいと受け取るかもしれないが、質問してくる人が、自分の質問をばからしいと思っているかは別だ」というのがあります。

上の「安易」とされた質問には人生がかかっているかもしれません。そりゃ犬小屋を作れないと大変ですよ。そりゃ南の島と南の島の間をヨットで横断するとした場合、正確な距離も知る必要があるでしょう(想像しすぎか)。

更に、

「現在、社会のなかで『安易な質問』にこたえる存在はどこにいるか?」

という問題があります。質問を受け取る存在は、図書館だけではないかもしれません。友達に聞けばいい質問も多いかもしれませんが、しかし友達があまりいなくて困っている場合も考えられるのです。しかもPCを使えなければ、本当に困ります。

「困ったら図書館へ」というスローガンをつい1年前に聞きました。このスローガンの良さは、おそらくスローガンを言った方の意図を越えて、図書館が持つ知の社会保障的側面を言い当てていることにあります。どんな質問をとにかく聞いて、資料紹介を通じて、解決への道筋を考えてみますよというのも、住民・市民にとって大事な社会保障サービスだと思うのですがいかがでしょうか?

「図書館が、一見、安易な質問に答えるのも大事」という思想的立場をたてた後、レファレンスのコスト配分について考えたり(例:連発してクイズをしかけるのを楽しんでいる場合は後回しなど)、図書館間のレファレンス分担を考えるという(例:この質問ならはここの図書館よりあちらの図書館の方がよいですね)社会設計的な論理に進んでいくのがいいのではないかと思います。

補足までに、私が主張しているのは、

「一見、安易と思える質問にこたえる公共サービスも必要だ」

ということです。

この問題、誰しもわかることなのですが、多くの方の関心事は「職員の雇用上の立場」にあります。ただサービスの担い手が公務員である必要があるかどうかという点は、私にはまだ解決できていません。(現在の考えでは、「公務員であった方がよい」、しかし「必要があるとまでは言えない」というものです)おいおい、結局、おまえはルシフェル橋下(by 「書物蔵」さんの用語)の使いなのかとなるのですが、わかんないものはわかんないのですので…。

はてぶも「書物蔵」さんの意見も大変参考になりました。