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課題解決型サービスの創造と展開

『課題解決型サービスの創造と展開』を読みました。

私は「課題解決型サービス」は、本当に面白いサービスだと思っています。またこの本のなかに書かれている諸実践から多くを学びました。各公共図書館のレベルの高さ(特に鳥取)に圧倒されました。

で、終わるとつまらないので、本エントリは、この本の内容に関係ない話をします。

私は、2-3年前に「課題解決型サービス」に興味を持ち、課題解決型サービスがもとにしている文部科学省の書類を数点あたったことがあります。おそらく下記2点が代表的なものではないかと思います。

■地域の情報ハブとしての図書館(課題解決型の図書館を目指して)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/tosho/houkoku/05091401.htm
■これからの図書館像−地域を支える情報拠点をめざして−
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/18/04/06032701.htm

「これからの図書館像」の方は、語りのモードが私と合わないこと以外は、特に違和感を感じなかったのですが、「地域の情報ハブとしての図書館」には、かなりの違和感を感じました。といっても紹介されているサービスや実践例にではなく、「はじめに」の、本当のはじめの文言にです。

内閣府経済財政諮問会議が打ち出した「骨太の方針」では、21世紀型経済・社会制度を確立する一環として、安心・安定した社会の実現に向け、地域・地方の自立を目指すことがうたわれている。更に、「豊かな生活とセーフティーネットを充実するために」の表題の下では、「地方自立・活性化プログラム〜地方ができることは地方に」という、同趣旨のプログラムも掲げられている。これらの方針やプログラムが目指すところは、地域の活性化、個性ある地方の発展、「美しい日本」の維持・創造にあると言ってよいだろう。このような日本社会を実現させるための国民的基盤として、一人ひとりの人間力向上及び「公共心」涵養に向けて、生涯学習の今日的な意義や重要性があらためて見直されている。

ちなみに、言及されている「骨太の方針」は2001、
http://www.kantei.go.jp/jp/kakugikettei/2001/honebuto/0626ga.html
「公共心」については、下記の答申が該当するかと思います。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/030301.htm

感じた違和感は2点あります。
①情緒的な、抽象的な文言の使用は逆効果なのではないか。
②図書館は、ネオリベラル社会において、どこまで社会のセーフティーネット足りうるのか。

①の点について;
「美しい日本」、人間力、「公共心」という言葉は、書き手の方々の意図はどうであれ、ちょっとどうかと思うのです。特に「公」(「公共心」)という言葉は、国家機関が使うとロクなことにならないことは歴史が証明しています。

②の点について;
「小さな政府」が一部実現した結果に対し、つまり派遣切りが横行し、後期高齢者が切り捨てられるような状況に対し、図書館がどこまで対応できているのかと疑問に感じるのです。率直に言って、荷が重いのではないでしょうか。ただ、現在、果敢にこういった問題に立ち向かうサービスも見られますので、今後に期待ですし、敬意も表しています。
http://current.ndl.go.jp/node/15575

おそらく「まえがき」は、ほんの導入部分で、書き手の方はそれほど言いたかったことではなかったと推測します。「言いがかり」的なものになっているかと冷や汗。