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(月3回以上更新目標)

ゲランドの塩物語

ノンフィクションマラソン3冊目、『ゲランドの塩物語』です。

いろいろ考えた結果、今後は、こちらのブログにも転載することにしました。

 この本は、タイトルにある通り、「塩」をめぐる物語です。フランス・ブルターニュのゲランド地方で代々伝えられてきた塩生産が、さまざまな開発の危機を乗り越え、伝統的な生産法を維持しつつ、現在に至る道のりが描かれています。私はこの本を読んで、フランスも日本と同じような事例があるのだなと感じました(というのも昨年、三重県伊勢地方に行き、反開発のカキ養殖業者の方のお話を聞いたことがあるからです)。このドラマそれ自体としては、私はよく聞く話であり、それほど感銘を受けませんでした。面白いと思った点、それはずばり「塩」です。
 本書から、人間の塩分濃度と、海水の塩分濃度がほぼ同じということを知りました。人間の身体はまさに海なのです。塩とはそれゆえ、もっとも原始的な食品であると言えるかもしれません。ヨーロッパの塩業の歴史、塩田の管理方法、塩職人と仲買人の関係などは、この本のなかで最も読ませる部分になっていると思います。
 惜しむらくは、もっともっと具体的な記述があった方が良い点。前半の狂牛病の記述を削ってでも、塩についてもっと記述がほしかった。著者が、ゲランドの塩に関する背景説明や、彼自身がなぜゲランドの塩について書くのかという動機づけを、説明することが大事だと考えていることはよくわかるのですが。