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貧乏物語

ノンフィクションマラソン4冊目、『貧乏物語』です。

貧乏物語 (岩波文庫 青132-1)

貧乏物語 (岩波文庫 青132-1)

  • 作者:河上 肇
  • 発売日: 1965/10/16
  • メディア: 文庫

 ノンフィクション100冊シリーズを始める際、ノンフィクションのブックリストをいろいろ見たのですが、参考にしたリストの1つに現代プレミア(Web版)があります。そのなかで佐藤優氏が『貧乏物語』を100冊の中にあげているのに気付き、意外の感を持ちました。
http://blog.goo.ne.jp/gendai_premier/e/42f85d9703d27374aaf78760dcfda152
 というのも、『貧乏物語』は、どちらというとノンフィクションではなく、経済学書なのではないかという感を持っていたからです。ともあれ未読だったので読んでみようと思い、手にしたところ、面白い、面白い。特に前半が。シンプルで深い問いに河上がぶちあたっている様子がよくわかります。その問いは、「なぜ世界一豊かな英国でこんなに貧乏人が多いのか」、「なぜ働けど働けど、生存を維持する以上の線に上がれない貧乏人がこんなに多いのか」というものです。今風に言いかえれば「ワーキングプア」の問題にぶちあたっているのです。この問いを抱え、河上はアダム・スミス自由経済思想を批判し、国家による再配分(社会政策)を持ち上げます。読書中、今の日本の現状を見ているような、デジャヴに襲われました。
 しかしこの本は中盤から急に道学者風の記述になってしまいます。貧乏を根治するためには富者がぜいたくを控えなければならないというところで、大きな?印が。この失速度、かなり激しいものがあります。この本が書かれた当時の成金ブームを意識していたのかな。

今度は、焦点を現代に移します。5冊目は『無縁社会』、6冊目では『移民還流』を取り上げる予定。