すっかり勢いが止まってしまいましたが、ノンフィクションマラソン8冊目です。
- 作者: ディヴィッド・ハルバースタム,山田耕介,山田侑平
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2009/10/14
- メディア: 単行本
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ニュージャーナリズムの旗手、デイヴィッド・ハルバースタム。彼の『ベスト&ブライテスト』を読んだ際、イマイチ、ピンと来なかった記憶があります。そこで再チャレンジということで、彼の遺作となった『ザ・コールデスト・ウィンター』を読んでみました。
結果は、・・・面白いですね、ドラマがあります。記述が平板でなく、波打っています。読書中、本を離すことができませんでした。政治の舞台のみが描かれるのでもなく、また戦闘の舞台のみが描かれるのでもない、政治と現場との<間>のドラマが展開されていきます。
この本では、トルーマンとマッカーサーとの対決、それに翻弄される朝鮮半島の前線の兵士の様子の記述に多くが割かれていますが、私は伏線ともいえるアメリカ本土での中国観の変遷とマッカーシズムの記述に興味を引かれました。アメリカでは共産中国の登場により、「中国を失った」と考える議員が多かったこと、民主党に対する共和党右派の攻撃が強まったこと、マッカーサーは共和党右派とのつながりが強く戦争の全面拡大を望んでいたこと(ただ具体的プランは何もなかった)など、この中国観が現在のイラク戦争まで影を引いていることなど、恥ずかしながら初めて知りました。共和党右派を抑えつつ、トルーマンが「封じ込め政策」を行っていったという説明には、教科書で学ぶだけだけでは結びつかないものが結びついた感がしました。
最後にこの本の射程(意図)ではないのですが、物足りないと思った点を少し。ハルバースタムは朝鮮戦争を一貫してアメリカからの視点で書いています。当然といえば当然なのですが、日本の視点、朝鮮半島の視点からも必要でしょう。また兵士だけでなく、そこに住んでいた朝鮮半島の人びとの視点も必要かと思います。ただこれは(明らかな)ないものねだりということで。