子どもたちの階級闘争

ノンフィクションマラソン、やっと15冊目です。素晴らしいルポです。

 ここに勤めていると、ソーシャルワーカーが介入している家庭の子どもを預かるのは日常の一部だ。しかし、底辺託児所時代には、親たちはみな子どもたちを取り上げられないように戦っていたのである。それが、緊縮託児所の親たちは手放そうとしている。(p.37)

ケン・ローチに「レディバードレディバード」という映画があります。イギリスの社会福祉制度は「ゆりかごから墓場まで」と言われるように手厚いものであることは知っていましたが、「レディバードレディバード」はその裏面を容赦なく描く映画でした。「レディバードレディバード」のヒロインは、シングルマザーで、DVの疑いで次々と福祉当局に自分の子どもを取り上げられてしまいます。その対応がいかにも杓子定規で、福祉行政の官僚的な対応の醜さがこれでもかと描かれていました。

レディバード・レディバード - Wikipedia

 今回紹介する『子どもたちの階級闘争』は、イギリスの下層階級の無料託児所でのボランティア体験記です。前半は「緊縮託児所時代 2015.3~2016.10」、後半は「底辺託児所時代 2008-2010」と題されています。筆者も述べているように、後半が比較的明るいトーンであるのに対し、前半は陰鬱なトーンに彩られています。緊縮財政の下で、下層民の間(例えば上層志向の移民とホワイト・トラッシュと呼ばれる地元民)での複雑骨折ともいえる分断が進む様が、エピソードに基づき描かれています。

託児所が財政難で無機質なフードバンクに変わったとき、筆者は「アナキズムと呼ばれる尊厳」(p.284)が失われたといいます。「底辺託児所」のエピソードには時にホロリとさせるものがあります。どんな人も生きる権利があるという絶対的な肯定が「底辺託児所」の記述にはあります。

ケン・ローチの映画に感動してしまうのも、そこに「アナキズムという尊厳」があるからなのかもしれない、と考えてしまいました。