ドキュメンタリーは格闘技である

いろいろやっていて少し更新が滞りました。ノンフィクションマラソン22冊目は『ドキュメンタリーは格闘技である』です。

原:(…)それから、いい機会なんで、お聞きしておきたいことがあるんです。『ゆきゆきて、神軍』を「ぴあ」の試写室で監督に見ていただきました。そのとき監督に意見を聞いたんですが、「そんなことはわからない」と一度は言われんたんですが、しばらくして監督は僕のところに来ていただいて、「君のキャメラワークはやさしい。いま俺に言えるのはそれだけだ」とひと言言っていただきました。(p.188)
大島渚との対談で

18歳~20歳の頃に、私が「本当の勉強」をしなければならないという強迫観念に駆られていたことは、既に別の記事で話しました。この頃から、映画もいろいろ見てみようと思い、勧められるままに見始めました。当時下宿していた京都は、レンタルビデオ屋が充実しており、かなりマイナーな作品にも比較的容易にアクセスできる状況でした。週3本くらい借りて見続けていたのですが、正直、よくわからない映画が大半ではありました。(このような例として、よく覚えているのは、タルコフスキーです。最近、『ブレードランナー2049』関連で話題となりましたが、若造には何が何だかわかりませんでした。ただ、今、見直してみたいなとも思っています。)

そんな中、映画初心者である私にも、強烈なインパクトが残った映画があります。いずれも日本映画なのですが、深作欣二仁義なき戦い』、岩井俊二『LOVE LETTER』、そして、原一男の『ゆきゆきて、神軍』です。特に『ゆきゆきて、神軍』は、最初の結婚式のシーンから完全に持ってかれました。

そしてこの頃、大島渚映画祭が開催され、それを見に行ったこともよく覚えています。率直に言って、大島渚野坂昭如と殴り合いのケンカをした人としか認識していませんでした。しかし、『絞死刑』や『忍者武芸帳』を見て、凄い監督だと心底思い、認識を改めました。

個人的な思い出話をしてしまいました。この本は、原一男監督と、深作欣二今村昌平大島渚新藤兼人監督やその関係者との対談をまとめた本です。この本の面白い点は、原監督の「聞きたいことを聞く」姿勢が貫かれていることです。目次の中に「撮りたいものを撮る」というのがあるのですが、大監督を目の前にしても、物怖じせず聞きたいことを聞いています。そして、質問に対する各監督の反応が様々で、これもまた面白いのです。(「撮ること」と「聞くこと」。この両者の同一性と違いは、どこにあるのでしょうか。本の感想を離れそんなことも考えました。)

個人的には、大島渚監督との対談のパートが一番面白かったです。特に土本監督との論争の箇所です(pp.174-176)。また、『忘れられた皇軍』の撮影秘話にも驚かされました。そして、上の引用は、大島監督の映画に対する誠実さ、眼力をうかがわせる言葉でジーンとしてしまいます(あの映画のキャメラから"優しさ"を見る眼はすごいです。)。

この本は、面白い話がちりばめられていて、これ以上紹介すると(ネタバレで)台無しとなる気がしますのでここまでということで。