追われゆく坑夫たち

年度末&年度始めと忙しく全く本が読めませんでした。ただ、社会人ならこのような時期があるのは仕方ありません。ぼちぼちでも本が読める環境に感謝して、再スタートです。日本の代表的な記録文学もコツコツ読んでいきたいと思っています。

追われゆく坑夫たち (岩波新書)

追われゆく坑夫たち (岩波新書)

 

今まで読む機会があったにもかかわらず、なかなか手を付けられなかった本です。そして、軽々しく要約することが厭われる本です。

この本では、北九州の中小炭鉱労働者の労働の苛烈さ(筆者は労働の「奴隷性」と呼んでいます。)について書かれています。それと同時に、その労働自体も奪われた後の、労働者たちの「遺棄」された状態についても書かれています。私は後者の面が印象に残りました。

中小炭鉱(ヤマ)での圧制や理不尽さに耐えかね、多くの炭鉱労働者が中小炭鉱を渡り歩きます。働く中で体が不自由になり働けなくなる者、組合を作って会社と対抗しようとするも解雇されてしまう者、多くの労働者が様々な理由で働けなくなります。くわえて、経営不振のため、また、炭鉱合理化の影響で、中小炭鉱が閉山となり、更に多くの労働者が失業者となります。そして、失業状態となった労働者について、筆者はこう書いています。

彼らがむなしく繰り返しているもの、それはーたとえ彼らにとってどれほど必死なものであってもーいかなる意味においても「生活」ではなくて、動物的な「棲息」そのものであった。しかしその恐るべき「棲息」状態にもまして私を戦慄させるものは、彼らが生ける屍として風化していく速度のはやさであった。(p.186)

この本では、上記のような、アガンベンのいう「剥き出しの生」ともいえる姿が印象に残りました。しかも収容所という行政機構ではなく、中小炭鉱という大手炭鉱を補完するような私的セクターで遺棄が起こっているのです。その点も印象に残りました。

次回、続けて上野英信の『地の底の笑い話』を紹介したいと思います。