人間の解剖はサルの解剖のための鍵である

ノンフィクションマラソンラソン30冊目は『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』です。

 本書は、現在生じている人間観の変容にかんする調査報告である。
そこで大きな役割を演じているのは、急速な発展をみせる認知と進化にかんする科学と技術である。認知革命と呼ばれる知的運動から生まれた認知心理学行動経済学、人口知能研究。遺伝子の観点から進化をみる血縁淘汰説(利己的遺伝子説)によってアップデートされた社会生物学進化心理学、人間行動生態学。こうした諸科学は、従来の人間観に改訂を迫るような知見をもたらしている。(p.6)

最近、話題となっているこの本。少し前の連休にイベントも聞きに行きました。下北沢にある、本屋B&Bというイベント型の書店にも興味があったので、一石二鳥でした。

bookandbeer.com

本屋B&Bのイベントでも話がありましたが、この本は、刊行を予定している著書の助走段階での「報告書」として書かれているとのことです。進化論や認知革命から、昨今のシンギュラティや人新世の議論まで、話題のトピックが紹介され、その思想的な勘所がわかりやすく紹介されています。

社会人として働いていると、目先の業務知識に目が奪われ視野が狭くなる傾向があります。これは私の思い込みかもしれませんが、大きな話をする人を、目先の問題を解決できない「評論家」といってバカにする風潮もあるような気がします。それゆえ、この本を読んでいる最中、知的に大きく背伸びし、リラックスしているような感覚になりました。

また、この本には、的確な要約・解説を超え、時々筆者の個人的な思いが見られる論文もあります。特に「見田宗介」論は面白いです。本人がそう思われているかどうかはわかりませんが、筆者が目指しているモデルが、<青年>でもあり<大人>でもある見田宗介なのではないかと思いました。