Random-Access Memory

(月3回以上更新目標)

会議の政治学

ノンフィクションマラソン、少しピッチを上げていかなければなりません。52冊目は『会議の政治学』です。

会議の政治学 (慈学選書)

会議の政治学 (慈学選書)

  • 作者:森田 朗
  • 出版社/メーカー: 慈学社出版
  • 発売日: 2006/12
  • メディア: 単行本
 

 本書では、専門的、第三者的性格をもつといわれている審議会での決定にも隅々まで政治が存在していること、あるいはしうること、それが整備された手続によって、換言すれば一定のゲームのルールに従って展開されていることを述べてきたつもりである。こうした方式は、若干オーバーな表現を使えば、最終的な政治の場への決定の負荷を減らすための「前さばき」の場として形成されてきた人間社会の知恵の産物ということができよう。機能不全に陥りつつあるかもしれないが、捨てるには忍びない。(pp.178-179)

この本は、タイトルから「会議」一般を対象にしているように見えるのですが、 政府や地方自治体の審議会を念頭に置いた本になっています。政策の検討に資するため省庁や自治体が審議会を設置することがあるのですが、この本ではそこでの意思決定や情報公開のテクニックについて著者の見解が記載されています。審議会が、省庁が政策を推進するための便利な「隠れ蓑」であるという批判があります。筆者はその側面を否定しません。それを前提として、それでもなお、審議会には一定の価値があると考えます。個人的には、引用にあるように、審議会は政治のコストを下げる役割があるという指摘に蒙を開かれました。清濁併せ飲むという、かなり「大人」な本であると思います。