ノンフィクションマラソン41冊目は『自由学問都市大坂』です。ノンフィクションというよりは、思想の解説本に近いですが。
自由学問都市大坂―懐徳堂と日本的理性の誕生 (講談社選書メチエ)
- 作者: 宮川康子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/02
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 1回
- この商品を含むブログ (2件) を見る
このような[水戸学的な]祭政一致的な社会統合論は、明治政府の国民統合の理念のなかにひきつがれている。天皇および朝廷の近代化は、国家神道の強力な整備とともに行われていくことになるのである。
この点で、はっきりと無鬼論を主張し、朝廷や天皇からも宗教的・呪術的要素をすべて洗い流そうとした懐徳堂の立場は、明治維新以後、現代までを通してみても、きわめて特異なものといっていいだろう。(p.145)
この本は、18世紀大阪の知的潮流、特に懐徳堂界隈の思想家(富永仲基、山片蟠桃など)に焦点を当て、その思想的可能性を考察した本です。荻生徂徠の古文辞学への批判、石田梅岩の心学への批判、上の引用にもある無鬼論がコンパクトにまとめられており、よき入門書となっています。
以下、素朴な感想ですが、やはり江戸期の思想は面白いですね。以前、『やちまた』を読んだときにも感じたのですが、西洋思想でポイントとなる点(例えば言語論)が既にテーマとされていたのだなあと感じました。また、今の我々の生活や日常道徳と儒教的な伝統とがどのように切り結ばれているのか、意外に気づかれていない結びつきがあるかもしれないなとも思いました。