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強制不妊

強制不妊――旧優生保護法を問う

強制不妊――旧優生保護法を問う

 

 この本は、旧優生保護法による強制不妊手術に関する毎日新聞のキャンペーン報道をまとめた本です。旧優生保護法の成立経緯、障害者運動やフェミニズムとの関係、公文書管理や情報公開の在り方に至るまで、多数の関係者の証言が紹介され、旧優生保護法が社会に与えた傷跡について検討されています。

この本では、複数の記者が参加することにより、様々な観点から多角的に事象が捉えられています。組織ジャーナリズムの良質な点が出ているのではないかと思いました(一方、手に取ったのは初版なのですが、少し誤植が見受けられました。少しもったないなとも思います。)。

特に印象に残ったのは、次の引用の箇所です。この問題の難しさがここからもわかります。歴史に<落とし前>をつけることはどのように可能なのだろうかと考えてしまいます。

なぜ、優生保護法成立以降の人権侵害の実態が70年にわたって闇に埋もれてきたのか。なぜ、不当な手術を受けて人生を台無しにされた当事者による裁判に起きなかったのか。答えは、強制不妊の対象にされた多くが、我が身に起きたことすら知らず、思うように自分の考えを伝えることができない由美のような障害者だったからだと路子は確信している。(p.45)

※由美、路子は、本の中で使用されている仮名である。