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試験勉強という名の知的冒険

ノンフィクションマラソン60冊目は『試験勉強という名の知的冒険』です。

試験勉強という名の知的冒険

試験勉強という名の知的冒険

  • 作者:富田 一彦
  • 発売日: 2012/04/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

脱線がだいぶ長くなったので、ここでまとめをしておこう。我々が今注目しているのは「答えではなく手がかりを探す」という方法であった。そして、その例として記号を利用する方法、問われているところ以外の共通性・対称性に注目する方法について語ってきた。この部分は「雑音を排除して手がかりをつかむ」という問題回答の極意に直結する発送の転換であり、勉強を進める上で、きわめて重要なステップであることを改めてここで強調しておきたい。(p.225)

この本は、予備校で英語を教えている著者が、大学入試問題を題材にしながら、問題を解くために必要な考え方について説いた本です。
問題を解くために必要な考え方とは何でしょうか。例えば英語の長文問題を思い浮かべてみてください。長文の中に登場する単語の意味をすべて知っているという人はあまりいないでしょう。もし、知らない単語の意味が問われたときどのように対応すればよいでしょうか。著者は、自分の知っている知識から無理やり解答を導くのではなく、必ず周りに問題を解くための手がかりが潜んでいるはずだと考えます。手掛かりを発見するためにも、まず、受験生は多くの状況に対応できるような汎用的な知識(例:文法知識)を身につけなければならないと述べられます。そのような知識を前提として、単語単体に拘泥せず、周りをしっかりと観察し手がかりを探すと、おのずと答えが出る構造となっているはずであると主張されています。

大学入試は答えがある問題が出題されます。答えがない問題の方が大事であり、大学入試がその観点から批判されることがあります。分からないことはないのですが、働き始めてから、答えがある問題をきちんと解くことも重要だと感じ始めています。答えがある問題が解けない理由は2つあると思います。1つ目は問題が専門的すぎて知識がないという理由です。これは、長期的に知識を付けるしか対処方法はありません。もう1つは、判断をミスしているという理由です。パーツを埋め合わせていけば多くの人が同一の結論となるにもかかわらず、明らかに妥当でない結論を導きだしてしまう。この本は判断に入る前の観察力の重要性が主張されていますが、仕事でも観察力がないため(例えば読み飛ばしなど)、判断を誤ることがあります。この本は仕事での判断過程を振り返る上でもいろいろ示唆を与えてくれる本だと感じました。

ノンフィクションマラソン、次回から5冊単位でジャンルを決めて読んでいきたいと思っています。まずは「教育」分野で5冊読みます。