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(月3回以上更新目標)

航路を守る(20年8月)

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めっちゃ暑いですね。皆様、元気でお過ごしでしょうか。

私は東京から離れることができずお盆を過ごしています。新橋に用事があり歩いていると、飲食店が結構閉店していて、新型コロナウィルスの影響を感じます。あまり外出してはいけないのでしょうが、どうしても行きたかった映画や展覧会に行ってきました。その記録を書きます。

1つ目は、映画「死霊魂」です。1950年末、中国の反右派闘争により収容所へ送られた人のインタビューで構成された映画です。8時間の映画にもかかわらず長さを感じませんでした。あと、ワンビン監督のインタビューがうまいというのも感じました。昨年の山形ドキュメンタリー映画祭で大賞を獲った作品ですが、監督がこの作品にかけた時間と労苦を考えれば当然だと思います。軽々に論じれないので、機会があれば他の作品も含めて触れてみたいと思います。

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展覧会は、東京都美術館で開催されている「The UKIYO-E 2020 ― 日本三大浮世絵コレクション」、東京ステーションギャラリーで開催されている「きたれ、バウハウス展」に行ってきました。浮世絵展は展示件数が多く充実していましたし、バウハウス展はカタログまで買ってしまいました。カタログをノンフィクションマラソンで取り上げてもよいかなと思っています。なお、記事冒頭の作品はバウハウス展で撮影したものです。色の付いた光を手に当て、その影が何色になるかを見る実験らしいのですが、黒色のような気が…。

さて、少し思うところがあり、小説も読もうかなと考えています。この数年、ノンフィクションを中心に読んできましたが、フィクションも読みたくなってきていました。そこで、まずは高校時代、挫折した『車輪の下』を読んでみました。

車輪の下で (光文社古典新訳文庫)

車輪の下で (光文社古典新訳文庫)

 

この本の内容は、著者ヘルマン・ヘッセの分身ともいえる、優等生ハンス・ギーベンラートが、学校制度や地域社会の中で挫折し、破滅していく物語です。

読後の感想は、この本は高校時代は絶対分からなかっただろうなということです。あの頃はレールの上、まさに車輪の上を何とか走ろうとしていた時期ですから。今、色々人生経験を積んで、逆にこの小説の面白さが分かるようになった気がします。豊かな自然描写とともにハンスの心理的不安定さ、繊細さが全面に出ている小説です。訳者の松永さんが若さと勢いを感じるとあとがきに書かれていましたが、私も同じように何か揺さぶられるような読書体験をしました。

色々、この社会の先行きは厳しいですが、正気を保って生きていきましょう!