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(月3回以上更新目標)

日本の歴史をよみなおす(全)

ノンフィクションマラソン72冊目は、『日本の歴史をよみなおす(全)』です。

このような社会的なものの見方は、文字や貨幣などの問題と同じように、日本の社会において、人間と自然のかかわり方が大きく変化してきたこととかかわりがあると思うので、自然がより明らかに人びとの目に見えてきたが故に、このようなケガレに対する畏れが消えていったのですが、それにともなって、ケガレを清める仕事に携わる人びとに対する忌避、差別感、蔑視の方向が表に現れてくるようになったのだと思います。(p.118)

この本は、著者の網野善彦が短期大学生に向けた講義をまとめた内容です。かなり分かりやすく書かれているのですが、歯ごたえがある本です。

本書は、平安時代鎌倉時代というような政体の区分ではなく、「人間と自然とのかかわり方」という文明史的視点を導入し、稲作を中心に捉えられた日本像に揺さぶりをかけます。本の前半では農民ではない職能民や女性に注目することで、後半(「続」)では海から見た日本像を提示することで、律令制に収まらない日本を描いていきます。

素朴な感想ですが、ポストモダンの議論で言われた「ノマド」の議論を日本史の場面で読んでいるような感じがありました。今回は短いですがこれまで。