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スローターハウス5

スローターハウス5』(カート・ヴォネガット・ジュニア著 ハヤカワ文庫)を読みました。

第2次世界大戦のアメリカ軍のドレスデン空襲をテーマにした小説ですが、突然、トラルファマドール星の話になったりして、一筋縄ではいかない小説です。ただ、大空襲のような出来事を、時間的秩序を混乱させながら書くのは面白い試みだと思います。心的トラウマは通常の時間秩序を破壊するとはよく言われますが、トラルファマドール星の話の入れることによって、たんなる証言ではない「表現」の次元を導き出しています。

たとえば小説の本筋ではない箇所ですが、主人公が映画をさかさまに見る以下の表現なんか面白いです。

「負傷者と死者をいっぱいのせた穴だらけの爆撃機が、イギリスの飛行場から後ろ向きにつぎつぎに飛び立っていく。フランス上空に来ると、ドイツの戦闘機が数機後ろ向きに襲い掛かり、爆撃機と搭乗員から、銃弾と金属の破片を吸い取る・・・」(p91)