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(月3回以上更新目標)

航路を決める(22年10月)

10月も末となり、すっかり秋の気配が色濃くなってきました。この10月で実感したことは、コロナ禍となって友人と本当に出歩かなくなったなということです。最近、ふと「寂しさ」や「虚しさ」を感じることが多く、この2年強の失われた時間の大きさを想っていました。また、そろそろ1人旅でよいので、旅行に行った方がよいなと感じ始めています。やはり職場と家の往復だと煮詰まってきてしまいます。

◆展覧会◆

東京都美術館岡本太郎展に行ってきました。上の画像は「明日の神話」です。一流の画家は、ある時点で自分のスタイルを獲得していて、岡本太郎も例外ではありません。岡本太郎の「個性」を感じることのできる展覧会でした。

◆読書◆

機会があり、次の2冊を読みました。

1冊目は『火花』です。この小説は、自分の学生時代、モラトリアム時代を思い出させる青春小説でした。学生時代、私は、教師からよりは、近くにいる友人から多くのことを学んだと思っています。『火花』の登場人物である「神谷」ほどの存在ではないものの、私にも複数、「師匠」的な存在(先輩・同級生)が近くにいました。「師匠」的な存在が、今、社会で活躍できているかというと、必ずしもそうとは言い切れません。当時、自らに課したものの大きさや、その人自身の限界など、様々な面が問題となり、彼ら自身が当初思っていた人生を送っていないこともある気がします。ただ、それを含めての人生であり、「バッドエンド」なき「途中」の人生なのだと思うのです。何か愛おしさを感じさせる小説でした。

2冊目は、ロバート・ウェスト―ルの『かかし』です。この小説はすごいです。児童文学の重要なテーマである「自立」の問題を、とても斬新な角度から取り扱っています。この作品は、母親の再婚を巡る息子(サイモン)の心理的葛藤が昂じ、最後サイコホラー的な展開となる作品です。サイモンの心理的葛藤は、母親が、自らの意志で「母」から「女」になることで引き起こされます。サイモンは、母が、自分が許容できない他者を愛する「女」になることにショックを受けるのです。しかし、サイモンが、母を一人の女性、つまりは一人の個人として受け入れることは、サイモンが<大人>になる、<自立する>ということでもあるのではないでしょうか。感想サイトで、母親が身勝手で共感できないという感想を複数見ました。その感想は分からないわけではないのですが、「身勝手な母親」(自分の愛を貫く母親)でなければ、この作品は成立しなかったのではないかとも思うのです。他にも、軍隊の文化と画家の世界の文化の違いなど、様々な仕掛けが張り巡らされている本で、名作といわれるだけあるなと思いました。

 

11月は、もっと主体的に色々挑戦していきたいと思います。