というわけで、結局、私の『方法序説』読みは、
デカルトの論理を宗教の枠組みに帰している点で、
哲学っぽい思考ではないなと感じたかもしれません。
しかしいろいろなものを読めば読むほど、
ヨーロッパとの文化的・宗教的違いを感じるのも事実です。
話を変えます。
西洋思想をちょっとかじると、
ニーチェが本当に偉大な人だとわかります。
なぜかというと誰も正面からいわなかった
「王様(神)は裸だ!」
ということを、ずけずけといったからです。
きわめて有名な『悦ばしき知識』の一節を引いてみます。
「諸君はあの狂った人のことを聞かなかったか。
彼は明るい午前中にカンテラをともし、市場へ走り、
たえず「私は神を捜している! 私は神を捜している!」と叫んだ。
市場にはちょうど神を信じない人たちが大勢集まっていたので、
彼は大笑をかった。
いったい神が行方不明になったのか? とある者はいった。
神が子どものように道に迷ったのか? と別の者はいった。
それとも、神は隠れているのか?
神は我々を怖がっているのか? 神は船に乗ったのか?
移民になったのか? 彼らはてんでに叫び、笑った。
狂った人は彼らのただなかにとびこみ、彼らをじっと見すえた。
「神はどこへいったか? 」、彼は叫んだ、
「私がそれを諸君にいおう! 我々が神を殺したのだ―諸君と私が!
我々は、皆、神の殺害者だ! しかし、どうしてそうしたのか? 」
*http://hatmine.hp.infoseek.co.jp/text/nietzsche.html より引用
私たちを支えていてくれた神、
理性を担保してくれていた神、
そんなものは存在せず、もう絶対確実の真理はない、
しかしその事態を引き受けて、
今ある「生」を肯定することがニーチェの思想の根幹にあります。
ニーチェの『反キリスト者』は本当に面白い著作です。
ぜひ読んでみてはどうでしょうか。