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硫黄島からの手紙

『硫黄島からの手紙』(クリント・イーストウッド監督)を見る。
これぞ映画だという出来だった。
「政治」とか「愛国心」とかいった大文字のイデオロギーが映画のなかに入り込んでいない、というより入り込まざるテーマを扱っていても、それを映像・表現の質が凌駕している。映画の中で印象的だったのは、栗林中将が玉砕や自決を徹底的に排除した部分。栗林は、「死の美学」、そしてその裏に隠れている「どうせ死ぬのだから」という思考停止を嫌い、その場、その場で生き残るため、「考え行動する」ことの重要性を説く。

栗林の存在によって、個々の日本兵が、映画のなかで、無名の兵士ではなく、考える主体として立ち上がってくる。手紙という映画的装置(アメリカ兵の手紙を日本兵が読むシーンなど)も面白いし、重層的な映画だった。