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カティンの森

アンジェイ・ワイダ監督の「カティンの森」を見てきました。
http://katyn-movie.com/pc/

予告篇を見た際、「ポーランドに人生を捧げた男、アンジェイ・ワイダが世界に放つ畢竟の大作」とあり、なんかすごい宣伝文句だなと思っていました。しかし見てみると「ほんとだ…」と感じてしまいました。それだけ彼個人の思いに溢れた映画となっています。

この映画には、本当に救いがありません。

カティン虐殺事件は、ナチのプロパガンダに使われたかと思えば、戦後はソ連のプロパンガンダに使われます。真実を言うことが、即、命取りになる社会、そんな社会のなかでも劇中の人物は、カティン虐殺事件の真実を伝えようとします。並みの映画であれば、なんらかの救いを用意するでしょう。しかしこの映画は、真実を伝えようとした者すべてが、不幸になるプロセスを淡々と描いていきます。劇中にギリシャ悲劇「アンティゴネー」が、それとなく触れられる箇所があります。墓碑を立てることさえ許されない社会の姿が、淡々と描かれていくのです。

観終わった後、すこし外をそぞろ歩いて、自分の感情の整理をしてしまいました。