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「アメとムチ」の構図

「アメとムチ」の構図―普天間移設の内幕

「アメとムチ」の構図―普天間移設の内幕

この本は、米軍再編後の普天間基地移設の経緯についてのノンフィクションです。那覇防衛施設局の佐藤氏の備忘録をもとにしながら、普天間移設という「ムチ」(基地)のため「アメ」(経済振興)をどう振りまいたかという話が書かれています。

…という話で始まるのですが、読んでいくと、「アメとムチ」の話が「単なるムチ」の話に変わっていきます。同意を取ることを前提とせず、強制により話を進めていくやり方が目立つようになっていくのです。

以下の引用箇所は非常に印象に残りました。

米軍再編以前から自民党の中央政治家と懇意にしてきた翁長は、再編を契機に政府との交渉が「はるかに厳しくなった」と肌で感じている。橋本政権時代、中央政治家は県内の応援演説でも、戦中戦後の沖縄との個人的接点や、戦争の原体験などを織り交ぜ、県民の心のひだに触れようと必死だった。日米安保の重要性を唱えながらも、県民の心をつかむため、苦渋の思いがよく伝わった。それが劇的に変化したのは小泉政権以降だという。(p.152)