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(月3回以上更新目標)

はてなBlogに移行しました

リブートするに当たって、はてなBlogに移行しました。また、過去記事を確認、現時点で削除した方がよいものを削除、レイアウトを修正しました。これを機にVer3.0とします。

過去の記事を確認していて気付いたことですが、アップした時点で書く必要性がないと思い手抜きしたところが、ことごとく意味不明となっていました。手抜きせずに、明確でわかりやすい文章でBlogを書いていきたいと思います。

遠野物語・山の人生

遠野物語・山の人生 (岩波文庫)

遠野物語・山の人生 (岩波文庫)

 

 「同胞国民の多数者の数千年間の行為と感想と経験とが、かつて観察し記録しまた攻究せられなかったのは不当だということ」(p.88)
「我々が空想で描いて見る世界よりも、隠れた現実の方が遥かに物深い」(p.95)

民俗学の祖、柳田国男の代表作「遠野物語」「山の人生」を読みました。柳田国男の著作は断片的にちょこちょこ読んでいたのですが、単著を通しで読んだのは恥ずかしながら初めてです。

柳田は歴史の流れの底流にある不変で静態的な層を研究しているという勝手なイメージがあったのですが、この本を読んで印象が変わりました。柳田が例に挙げるのは、民俗的な風習よりも、神隠しとか狐や狸に騙されるとかいったような、超常現象が遥かに多いのです。確かに、「遠野物語」で有名となった座敷わらしも超常現象ですね。

この超常現象が、単なる心理現象だけでなく、また、中国から伝来した仏教等の影響だけでなく、「山人」の仕業であった場合もあったのだと柳田は考えます。「山人」は、山男とか山姥とも言われ、里にいる人々とは違う生活習慣を持つ人々のことです。そして、彼・彼女ら「山人」は日本の先住民族だったのだ、と彼は大胆な仮説を唱えるのです。最終的に「山人」は、里の人々と同化し、その習慣は絶えることになったとも彼は考えます。

現在の学問的水準からいって先住民族論は否定されているかもしれません。ただ、この本は様々な領域に展開していける種がたくさん埋まっている本だと思います。私は、精神分析の著作との類似性を感じました。思いつきではありますが、フロイトの「モーセ一神教」と比較をしてみても面白いと思います。

モーセと一神教 (ちくま学芸文庫)

モーセと一神教 (ちくま学芸文庫)

 

 

敵対する思想の自由

ノンフィクションマラソン11冊目は、『敵対する思想の自由』です。

敵対する思想の自由: アメリカ最高裁判事と修正第一条の物語

敵対する思想の自由: アメリカ最高裁判事と修正第一条の物語

原題は、"Freedom of the Thought that We hate -A bibliography of the First Amendement" (『我々が忌み嫌う思想の自由 修正第1条の物語』)です。

この本は、ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニストをしていたアンソニー・ルイスが、アメリカ合衆国修正第1条が裁判官にどのように解釈されてきたのかという歴史を追った本です。

この本を読むと、アメリカのノンフィクションと言論の自由に関する法制度とが密接な関係にあることがわかります。

この本では、報道機関と政府との間で言論の自由が問題化する事例が多数紹介されています。そのなかでも核となる判例に、ニューヨーク・タイムズサリヴァン事件があります。

マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師は、プレス(新聞・雑誌)が黒人差別の現実を取り上げることが世論の喚起につながるとして、公民権運動を行う際、メディア戦略を重視しました。1960年3月29日にニューヨーク・タイムズ紙は、キング牧師の支援者による1頁の意見広告を載せます。そこには、南部で公民権活動家を公務員が不当に弾圧していることが書かれていました。それに対し、当の南部の公務員(サリヴァン)が「文書による名誉棄損」でニューヨーク・タイムズを訴えたのです。

当時のアメリカの名誉毀損訴訟では、被告の側に挙証責任がありました。ニューヨーク・タイムズ社は、意見広告が全ての面で真実であるとは言えず、敗訴する可能性がありました。敗訴がもたらす帰結は、報道の萎縮です。

サリヴァン訴訟は、ニューヨーク・タイムズ社のみならず全米の報道機関に対しても、その法的リスクのために公民権運動の報道を行うことをためらわせる可能性があった。(…)この訴訟は、人種差別を全米に晒すというキング牧師の戦略自体を危うくしてしまった。最も根本的な点で、それは人々に知らしむるという修正第一条の目的をも脅かした。(p.73)

アメリカ合衆国最高裁判所は、修正第一条の中核的な意味として、「公的な人物や政策を批判する権利」があるとしました(なお、その結論を導き出した理路として、18世紀末から19世紀初頭にかけての「治安法」を巡る議論が紹介されています。)。その結果、名誉毀損訴訟に「勝訴するためには原告が虚偽を立証しなければならず、そればかりか、書き手や出版社の側に、単なるうっかりミスでなく、過失があったことまで立証」(p.77)しなければならなくなったのです。

合衆国でこの判決直後から見られた成果は、果てることのない名誉毀損訴訟という脅威から解放されたプレスが、南部における人種間の争いを徹底的に取材・報道する道を開いたことであった。(p.78)

更に、サリヴァン判決は、ヴェトナム戦争ウォーターゲート事件に関する報道を生む間接的要因になったのだとルイスは論じます。ただ報道機関による言論の自由が大幅に認められた反面、報道機関の特権性(裁判における情報源の秘匿)、報道機関によるプライバシー侵害の問題も出てきたのです。

この本は報道機関から見た言論の自由について手際よくまとめています。が、分析が若干表面的な感もありましまた。同じような論点で、アメリカの表現の自由を論じた以下の本を昔に読み、大変面白かったことを記憶しています。御興味あれば。

「表現の自由」を求めて―アメリカにおける権利獲得の軌跡

「表現の自由」を求めて―アメリカにおける権利獲得の軌跡

(参考)アメリカ合衆国憲法の修正第一条

連邦議会は、国教を樹立し、若しくは信教上の自由な行為を禁止する法律を制定してはならない。また、言論若しくは出版の自由、又は人民が平穏に集会し、また苦痛の救済を求めるため政府に請願する権利を侵す法律を制定してはならない。
(引用:https://ja.wikisource.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E5%90%88%E8%A1%86%E5%9B%BD%E6%86%B2%E6%B3%95

不惑を迎えて

前回の記事が2013年1月7日ですので、ほぼ4年ぶりのエントリです。

皆様、お元気に過ごされていましたか?

この4年間は、目の前のことを、それなりにではありますが必死にこなしていました。ただ、この2月に、自分が不惑と呼ばれる年になり、逆にこのままでよいのかと惑いが出てきている面があります。

特に自分自身の「コア」になるものがないと言ってもよい状態であることに、とても焦りを覚えています。目の前のことにしっかりと取り組もうとすることは当然であるとしても、それだけだと環境に自分が振り回されているだけとなってしまいます。

そんなことを考えつつ、誇れる実績はないにせよ、自分のコアになる価値観は何だろうと考えてきました。学生時代に哲学を勉強しそこで限界にぶつかったこと、働く中で「調べること」「記録すること」が大事な営みであると感じたこと、その観点からノンフィクション、ドキュメンタリー映画から社会教育学に至るまで広く関心を持ったこと、端的にはブログに書いてきたようなことが自分の底流を流れています。

自分のコアを確認し作り上げるために、ブログを細々と再開しようかなと思っています。その先に1本、何か「形」になるものを仕上げたいなとも思っています。

先日、臨床心理学を勉強している方と話したのですが、40歳前後は「人生の正午」と呼ばれ心理的な危機を引き起こしやすいとのこと。親、友人も歳を取り、自分も人生の下り坂を歩み始めます。なんとかもがいていくしかないなという感じです。

あけおめ&2012年の映画ランキング!

新年、明けましておめでとうございます。関係各位にはご迷惑をおかけしております…。さて、仕事帰りに映画で気分転換することが多い旧年でした。メモを取ったのが10月からだったのですが、以下に紹介していきます。各カテゴリー内は順不同です。

というわけで、本年は、「映画かいけつゾロリのだだだいぼうけん」(http://www.zorori-movie.jp/)から始めようと思います!(笑)

★★★
1.「ドライブ」http://drive-movie.jp/
オープニングタイトルまでの映像を見て、「とんでもないのがきた」と思いました。画面がとにかく美しいです、せりふがなくても感情は伝わるのです。

2.「これは映画ではない」http://www.eigadewanai.com/
イランの監督で、国家から「映画」を作るなといわれているパナヒ監督。じゃあ「映画」ってそもそも何なの?という問いを、延々とやり続ける作品です。シナリオ読みをそのまま撮影するのは映画なのか?ドキュメンタリー/劇作品の違いは何なのか?といったなど面白い観点一杯の、立派な「劇映画」でした。

3.「ドラゴンタトゥーの女
4.「007 スカイフォール
3,4ともオープニングタイトルが秀逸! Youtubeに落ちているのでぜひご覧あれ。

5.「タケヤネの里」http://www31.ocn.ne.jp/~minneiken/takeyane/
竹という視点から、歴史を振り返る秀逸な作品です。この監督の「土徳」(http://dotoku.net/)という映画、見たいなー。

6.「ザ・レイドhttp://www.theraid.jp/index.html
これ以上やると人が死にます…。

★★
1.デンジャラスラン
2.ボーンレガシー
3. アルゴ
4. 推理作家ポー 最後の5日間
5.黄金を抱いて跳べ
6.The Wave
7. 裏切りのサーカス
8. アウトレイジ・ビヨンド
9.おおかみこどもの雨と雪
10. バトルシップ
11.ミッション・インポッシブル2(なぜか(笑))


以下の3本は見方がわからなかった映画です。
いずれも評価が高い映画です。気づいていない点があるかも。

1.「ダークナイト ライジング」
最後、「なんじゃそりゃ!」というシナリオでした。
2.「レ・ミゼラブル
ミュージカルと映画の組み合わせの悪さが出てしまったような…。多様な非言語的意味を有する映像の上に、ミュージカルの歌声をかぶせられると興ざめしてしまうのです。
3.「最強のふたり
評判がすごく高いのですが、映画としての出来はともかく、悪い意味での「寛容さ」全開で、観ていて気持ち悪かったです…。