『20世紀精神病理学史』(渡辺哲夫 ちくま学芸文庫)を読みました。
渡辺は精神病理学が「歴史」を見失ってきたと批判します(ただこの「歴史」とは出来事の連鎖ではなく、文化や伝統のような精神的な歴史のことです)<個人的な疾病(個)の分析にとどまり、精神史のレヴェル(個を貫く歴史)を無視していると批判するのです。そこでオルテガやアレントなど、精神病理学とは無縁と思われる人たちの紹介もしながら、精神病理学が「故郷喪失」の時代の産物と捉えられていきます。
上の考察は面白いし、哲学的には正しいかもしれないけど、精神史という抽象的なものが持ち出されると、話がすこし大きくなりすぎるなという感じがします。