Random-Access Memory

(月3回以上更新目標)

赤ちゃんの値段

とあるきっかけで、『赤ちゃんの値段』
(高倉正樹著 講談社)を読みました。

実はこの本を手にとる前に文藝春秋10月号「格差社会が歪める十代の性」という彼の記事を読んで、愕然となっていた。

未成年の中絶率が増していることを述べた箇所で、

「この中絶率の傾向と奇妙な重なりを見せるまったく別の統計がある。内閣府が集計する「一人当たり県民所得」だ」(p.302)

と書いてあります。格差社会地域格差を生むことはよく言われる話ですが、「産む」場面にまで影響を及ぼしているとは想像できませんでした。

『赤ちゃんの値段』は、「望まない妊娠」をしながら中絶を選ばなかった女性の子供が、養子に出される、しかも国内の里親へ出されるのではなく、海外へ養子へ出される、その経緯をルポしたものだ。この「海外養子斡旋」が抱える問題点を、制度的な面を丁寧に追いながら記述している。きわめて「社会」的だと思われるテーマの本だ。言い換えれば人身売買というテーマを扱っているのだし。しかしこの本を読んで、なぜか感情がかき乱されました。「感涙のドキュメント」(帯の文面)といわれると、それは違うと思うのだけど。