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先住民族の「近代史」

先住民族の「近代史」―植民地主義を超えるために (平凡社選書)

先住民族の「近代史」―植民地主義を超えるために (平凡社選書)

これは面白い本です。尖閣諸島問題、北方領土問題、そしてCOP10で議論された遺伝資源の配分の問題すべてに、先住民族の影があることに気づかされます。特に第3章「近代国家日本と『北海道』『沖縄』の植民地化」は大変読み応えがある章です。国際法上の「先占権の主張」「実効的支配」が、明治政府の対露交渉や琉球処分の際、どのように解釈され、用いられたかが詳細に検討されています。
筆者の大枠の論理としては、ヤマトと(アジア的な)朝貢制度下にある北海道・沖縄を、ヤマトが(ヨーロッパ的な)「実効支配」下にあると主張することから、北海道、沖縄の植民地化が始まったというものです。この論理が検討に値するのは、突如として出てきた中国の沖縄領有の主張も、朝貢関係を領有関係にスライドさせることから来ていると思われるからです。
中国の主張はムチャぶりに近いのは言うまでもありません。だからこそ自国の歴史について、きちんと見る目を持っておきたいと考えています。