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キューポラのある街

実は近くのホテル兼文化施設(!)で、1000円程度で映画が見れる催しがあるんですけど、これが予想に反して面白い。

たとえば「キューポラのある街」(監督:浦山桐郎)。吉永小百合映画なんだろうなと思ったら、がんがんの社会派の映画でした。

機械化の波に押され鉄工所が閉鎖されていく街、貧しいながらも画一化されない子供の生き生きとした遊び、最後の組合万歳には閉口したけれど、失われてしまった(花鳥風月ではない)日本の風景が映画のなかで描かれていて、面白かったんです。高度経済成長については成功体験が多く語られるのですが(プロジェクトXなどが典型例ですね)、負の側面をきちんと描こうとする映画の姿勢に共感を覚えました。

圧巻だったのは、北朝鮮に向かう家族のことを描いている点。今、「日本人妻」という言葉がよく使われるけど、その「日本人妻」の具体像が映画のなかに書かれていて、今の拉致問題と重なりあって見えてきました。この映画の限界でもある部分だけれど、衝撃を受けながら映画を見ていました。

ある批評家の、歴史は「前史」と「後史」があるという発言が身にしみます。