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近代 未完のプロジェクト

『近代 未完のプロジェクト』(J・ハーバーマス 三島憲一編訳 岩波現代文庫)を読みました。

現在、図書館の世界内に、「知の公共的基盤」を構築するという言説があり、また、図書館自体がきわめて近代の産物であると思われるので、ハーバーマス読みますか、と思って読んだもの。

で、感想ですが意外に面白かったんです。相変わらずハーバーマスは、人間の持つ深みを巧妙に避けつつ、論を展開するなと苦笑しましたが。面白いというのは「新聞記事」として良質であること。論点がきれいに整理されていて、哲学的なレヴェルも保障されている。こんな新聞記事だったら読んでみたいなと思ったのです。

とりわけ、話題がドイツ統一に関するところは面白かったんです。現在、ホロコースト研究は日本でも盛んですが、なぜ今になってホロコーストの問題が出てくるのか、歴史的な経緯がいまいちわからなかったんですが、東ドイツ体制崩壊がトリガーになっていたことがわかり、なるほど!、でもおれって勉強不足やんと感じてしまいました。。。

ハーバーマスが引用していた、西独の人の発言から。

「根本的問題はこういうことである。ナチス隣組長的なメンタリテリィがドイツの一部分で何の屈折もなく存続しえたのには、どんな条件が、どんな契機が、どんな理由があったからなのだろうか。そしてもし我々が正直であるならば、そうしたメンタリティは、西側でも、もしそれが誉められ、なんらかの利益が結びついていたとしたら、やはり続いていたであろうと思わざるを得ない」(p252)