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(月3回以上更新目標)

三歩後退一歩前進(その10)

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よく自分の視線の向かう先を考えます。自分が俯きがちで、意識的に上を向いていないと猫背になるからです。

自分の昔を振り返るこのシリーズ、一旦、閉じたいと考えています。今、自分の視線を、「昔」ではなく「未来」へ向けないといけないと考えています。昔、ある記事に書いたことなのですが、40代に入り、目の前のことをこなすだけで、振り回されている感じがしていました。

tsubosh.hatenablog.com

 ただ、その記事を書いたときに気づいていなかったのが、自分なりの到達点(ゴール)の重要性です。自分が何を大事にして、どこを目指しているのかをきちんと意識していないから、振り回されるのだと思いました。最近読んだ次の本にそのとおりだなと思うフレーズがありましたので引用します。

時間の使い方とは結局のところ、自分の価値観を見直し、どういう生き方をしたいかの「意思表示」でもあるのです。時間術とはライフハックではなく「意思」なのです。自分がどういう人間で、何を大切にしているのか、この先、どういう人生を送りたいのかという自分なりの意志と密接に関わってきます。(p.26)

上の写真は、仕事が終わり、市ヶ谷駅まで歩いて撮った写真です。頭をクールダウンさせるために、夜歩くのが大好きです。視線を上げ、明かりがついているビルを見ます。そこに働いている人がいてそれぞれの人生があるのだという感慨を持ちます。人と変わらない普通の人生だが、しかし、芯が入った生き方をしたいものです。

近況報告(2018年12月初旬)

最近、あまり本を読んだり、勉強したりできていないです。多忙が恒常化していますが、自分の時間をきちんと確保したいものです。

スマホタブレットの普及に伴い、写真(更には動画も)を撮ることが簡単になったにもかかわらずあまり活用できていないので、写真をとって日常生活の記録としたいと思っています。1枚目は私が現在住んでいる場所の写真、2枚目がよく行く定食屋(魚角さん)の定食の写真です。住みやすい街です。

記録といえば、とある自己啓発本のきっかけで「4行日記」というものを付け始めました。自分の中で少し記録ブームかもしれません。

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「レジリエンス」の鍛え方

今までとは少し趣向が違う本となりますが、ノンフィクションマラソン32冊目は『「レジリエンス」の鍛え方』です。

世界のエリートがIQ・学歴よりも重視! 「レジリエンス」の鍛え方

世界のエリートがIQ・学歴よりも重視! 「レジリエンス」の鍛え方

 

 私はポジティブ心理学の知見は「おばあちゃんの知恵」に似ているとよく受講生に話します。ポジティブ心理学の科学的な研究によって判明した結論は、決して目新しいものでないことが多い。しかし、当たり前に思えることを実際にやっている人は少ないのです。(p.171)

最近、「レジリエンス」という言葉をよく聞くようになりました。レジリエンスとはそもそも「復元力」という意味で、心理学の領域では、負荷がかかっても柔軟に対応できる力のことをいうようです。この本は、ポジティブ心理学の見地から、心理的なダメージを受けたときからの回復方法から自分の強みをいかす方法までわかりやすく紹介しています。

先に少し批判的なコメントをすると、この本は少し自己啓発系な方向性を持つ本です。意地悪な言い方をするなら、新自由主義の中で、個人単位での感情の「マネジメント」がいかに重要かを説いた本であるともいえるでしょう。

しかし、私は、最近の組織が、従業員の「弱み」よりも「強み」に注目しつつあるという見解に目を開かされました。これは面白いし、強みをいかせる職場であれば快適に仕事ができます。ゼネラリストを重視する組織にいるため、どの業務でも平均的にこなすことができる人間が社会では求められると思い込んでいた節がありました。どうやって個々の人の強みにフォーカスして組織運営ができるのか、デコボコな人員配置にならないのか、もう少し具体的な議論を知りたいと思います。

また、そもそも自分の強みを自分で把握していないことに気づきました。「あなたの強みは何ですか」と聞かれて、今の私では即答できません。自分の意識が、雑な性格を直すこと、口が軽いのをやめなければいけないという、短所克服に向いていたことに気づかされました。あ、口が軽いのはまずいですね、これは直します!

そして、この本で、ストレングスファインダーという、自分の強みがわかるツールがあると知り早速やってみました。薄々気づかれていると思いますが、私、こういうの大好きです。次の本から無料診断サイトのアクセスコードが手に入ります。

さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 新版 ストレングス・ファインダー2.0
 

 結果は「収集心」「内省」「運命思考」「着想」「成長促進」というのが私の強みとのことでした。たしかに、ゴシップな話題好き(=収集心)、時々、複雑に問題を考え過ぎてしまう(=内省)、なかなか変わったことができない(=運命思考)、が、突然突飛なことを言う(=着想)、ちょっと教え好き(=成長促進)なところはあります。ここを弱みではなく強みに転換できればといいなと考えています。

沸点

ノンフィクションマラソン、31冊目は『沸点』です。史実そのものではないですが、史実を基にしたグラフィックノベルです。

増補版 沸点ーソウル・オン・ザ・ストリート

増補版 沸点ーソウル・オン・ザ・ストリート

 

 先日、話題になっていた『1987年 ある闘いの真実』という映画を見てきました。『沸点』もこの映画も、韓国の1987年6月民主抗争を描いたものです。

6月民主抗争 - Wikipedia


「1987、ある闘いの真実」予告編

両方とも、朝鮮戦争光州事件をはじめとする韓国の現代史のトラウマが濃密に描きこまれていて心が苦しくなります。『1987年 ある闘いの真実』に出て来るパク所長が映画の最後あたりでいう「本当の地獄を見たことがあるか」というセリフから始まるシーンは、人が絶対に転ぶ拷問が何であるかがわかり、とりわけ背筋がゾクッとする恐怖感があります。

同時に韓国の民主主義の「強さ」も感じられます。1987年といえば、ちょうど私が小学生の頃です。私と同世代の韓国の人は小学校で反共をたたきこまれ、私のまわりにいる上司たちの年代の人たちがデモに参加していたのかと思うと、日本との環境の違いが実感できます。

今回は短いですがこれくらいで。

劇場版若おかみは小学生!


劇場版「若おかみは小学生!」予告編

ネットでの評判がよかったので『劇場版「若おかみは小学生!」』を見てきました。とても新鮮だったのは、ストーリーの中で、3つのベクトルが同時に多声的に働いている点です。

1つ目のベクトルは、主人公おっこが様々な他者(旅館で働く人々、旅館のお客など)との関係の中で大人になっていく、いわゆる教養小説ビルドゥングスロマン)的なベクトルです。2つ目は、おっこが家族との別離という心の傷(トラウマ)を克服していくベクトルです。3つ目は、おっこの傍にいる死者たち(ユーレイ)の思いが、おっこの成長を通じて、成就していくベクトルです。

2つ目のベクトルに焦点を当てた傑作映画として頭に浮かぶのは、相米慎二監督の『お引越し』です。(そういえば、この『お引越し』も最後は祭りのシーンで終わりますね。)『お引越し』は主人公が両親の離婚を受け入れる過程を描く映画でした。『若おかみは小学生!』もその系譜に属しているのですが、この映画の画期的な点はストーリーの中に第3のベクトルがあることではないかと思います。この第3のベクトルがあることで、更に物語に奥行きが出てくるのです。まだ映画を見ていない人は是非見ていただければと思いますが、劇中、ユーレイの美陽が真月を「抱きしめる」シーンがあります。このシーンにはちょっと落涙しそうになりました。

この映画は可愛らしいキャラデザインもあり、楽しく見れる映画です。こむつかしいことを考える必要はありません。が、私はこの映画を見た後、下の一節をずっと思い出していました。思想的文脈はかなり違うのですが、引用して感想を閉じたいと思います。

過去という本にはひそかな索引が付されていて、その索引は過去の解放を指示している。じじつ、かつてのひとたちの周囲にあった空気の、ひとすじのいぶきは、ぼくら自身に触れてきてはいないか?ぼくらが耳を傾けるさまざまな声のなかには、いまや沈黙した声のこだまが混じってはいないか?ぼくらが希求する女たちには、かの女たちがもはや知ることのなかった姉たちが、いるのではないか?もしそうだとすれば、かつての諸世代とぼくらの世代のあいだには、ひそかな約束があり、ぼくらはかれらの期待をになって、この地上に出てきたのだ。(ヴァルター・ベンヤミン「歴史哲学テーゼ」『ベンヤミンの仕事2 ボードレール 他五篇』野村修訳,岩波文庫,1994年 pp.328-329)